矯正治療で前歯のガタガタだけを治したい、上の歯並びだけ治したい、また下だけ治したいなど、一部または局部的な治療を希望する質問がよく来ます。
こういった質問者の多くは、当然ながら自分の一番気になる部分だけしか目がいってないようで、それも他人が見て気付く場所を言っているようです。逆に他人から見えない奥歯などは、ガタガタであってもさほど気にならないようです。
人間の歯は数、大きさ、そして左右対称性がなければ自分の天然の歯ではきちんと咬めない解剖学的構造をしています。ですから上だけ、下だけといった矯正治療は余程特殊な例で無い限りあり得ないというのが矯正専門医では常識です。
矯正治療は単に並べて咬めるようにすれば良いというものではなく、折角並べて咬ませた歯並びが永く維持できる口腔内の環境にしなければ意味がありません。すなわち口の中の唾液が乾燥しないために口元の調和を考慮する必要があるということです。勿論抜歯が不要で口元の調和が取れればそれに越した事はありませんが、この口元の調和を考慮すると日本人の80%近くが抜歯しなければ対応できないと言われています(参考のために白人種は逆に80%が非抜歯で対応出来ると言われています)。
ということは日本人の80%の人は抜歯しなければ口元も調和は得られないわけですから、上だけ並べる場合に上だけ抜歯することになり、上下の対称性は亡くなりますので、自分の歯では咬めなくなってしまいます。下だけでも同じことが言えます。
基本的に一部分だけといった矯正治療は、歯が数本喪失してしまっているといった状況の場合に可能性がある程度で、上下左右の歯がきちんと数が揃っているケースではまず行なうことはありません。
こういった質問をされる方は、審美歯科、美容歯科といった言葉と混同されている面もあります。基本的に歯科において審美歯科、美容歯科といった科は法的に存在しませんで、勝手に作られ使われているというのが現状です。多くは歯を移動させるというよりも天然の歯を削って人工歯を被せるといった処置が主といえます。
矯正歯科と混同されている傾向がありますが、全く違うものです。矯正歯科は専門の科として法的にも認められて存在しています。そして、矯正歯科は歯を削るなどの処置を絶対に行ないませんで、天然の歯だけを動かし綺麗に並べ咬ませかつ口元の調和も考慮する治療なのです。
情報ネットの普及に伴い、情報が氾濫し、簡単に色々な情報が手に入るようになった反面、その情報が本当に正しいのかといった判断が非常に難しいというのが今の現実です。
何が正しい情報なのかを選択するときに、本当に情報を発信している矯正医が専門医制度の試験に合格し臨床能力を担保されているかいないのかは重要なポイントになることは間違いありません。しかし、その合格者は全国でも現在は200名強程度しかいません。全国に矯正歯科と標榜している歯科医院が都内だけでも1万軒以上ある事を考えるととんでもなく少数派と言えます。
その少数派の情報もネット上では、同様に非常に少数であるということです。情報を正しく判断する上でつい多数決の意見が正しいと勘違いしてしまうのが、民主主義なのかもしれませんが、それが今のネットの大きな落とし穴だとも言えます。
ネット上では上だけでも前歯だけでも綺麗に並べることはできますという情報は沢山溢れていますが、情報を発信している歯科医は矯正専門医ではなく、ましてや認定歯科矯正医ではないというのが現状です。
- 2011/03/08(火) 13:18:24|
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一昔前は八重歯のタレントや歌手が結構いました。今はさすがに売れてるタレントや、歌手ではあまり八重歯は見かけなくなりましたが、デビュー仕立てとかタレント志望といった若い人にはまだまだ八重歯は健在といったようです。
八重歯は可愛いというイメージが昔はありました。確かに八重歯の人の多くは、口元の調和が取れている人なのです。いわゆる口ぽかんと開いてる人が少なく、横顔が美しく整っている人に八重歯が見られます。
すなわち口元の調和がとれ横顔が美しく整っているのですが、そんな人がたまたま笑うと八重歯が露出して美しい口元とのギャップが大きく、そのギャップが愛嬌となり、可愛いというイメージに結びついたようです。
昔の八重歯だった女優や歌手達のほとんどが、今では、八重歯を抜いて残った歯を削り差し歯と言われる人工歯に変えて綺麗に並べています。しかし、あくまでも人工物ですので天然歯と違い、一度入れれば大丈夫とはいきませんので、定期的な診査は当然必要ですし、再製も必要となってきます。当然医療費も定期的に相当な額になるのも仕方ないかもしれません。
しかし、今のしっかりした芸能プロダクションでは、若い頃にレッスンを受けさせるのと同時に矯正治療で歯並びも綺麗に整え、それからデビューさせるそうです。そうしたタレントや女優は自分の天然の歯ですから、手入れ(歯磨き)さえしっかりすれば一生自分の歯で食べたり、おしゃべりをすることが可能なわけです。ましてや治療費も専門医のところで約100万前後ですが、人工歯を綺麗に並べるには複数の歯を削る必要がありますので費用的にも矯正治療以上の費用が掛ることになります。
いずれにしても八重歯を治すのには二通りありまして、矯正治療による天然歯を並べるのと歯を削って治すという方法です。それぞれにメリットもデメリットもありますが、矯正治療のメリットは天然の歯ということです。デメリットは治療期間が約2年間と長い。削って並べ替えるのは短時間でできるということがメリットです。デメリットは人工歯だから定期的に再製することが必要でその都度矯正の治療費以上の治療費が掛かるということです。
最後に、八重歯のおじいちゃんやおばあちゃんを見た事ありますか?私は長い事歯科医をやっていますが、未だに一人も見た事無いのです。おじいちゃんやおばあちゃんも昔は若かったのです。そして今と同じで沢山の八重歯の人もいたのです。ですが、八重歯であることは当然歯並びが悪いわけですから、歯磨くがきちんと出来ないため虫歯を作ったり、歯周病になったりで歯を失い入れ歯になってしまった結果、八重歯のお年寄りがいなくなったのです。
- 2011/03/01(火) 09:31:43|
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先日の日曜日藤沢市の市民会館で「ふじさわ健康メッセ2010」というイベントが開催されました。共催として藤沢医師会、藤沢薬剤師会とともに藤沢歯科医師会も参加いたしました。
市民の健康に対する関心を高める企画でNPOなどボランティア団体も多数参加してのイベントですが、今回初めてのことで、前準備の打ち合わせなど結構大変だったそうです。
そんなイベントで私は矯正歯科専門医として歯並びの相談窓口を担当しましたが、相談者総計約50名中5名の歯並び相談者がありました。初めての開催なので多いのか少ないのかの判断は判りませんが、相談者の10%が歯並びを気にしているということですね。
そして相談者は全て子供の保護者なのですが、その子供達は1才~5才が2名、6才~10才が2名、16才が1名とかなり低年齢児が目立ちます。その低年齢児の保護者は当然ネットで歯並びの情報を集め、歯並びの治療法などを理解しようと考えた訳ですが、ネット上にはあまりにも情報が氾濫してかつ全く矛盾する情報が溢れているため、皮肉なことにより深く理解する積もりが、逆に何が何だか判らなくなってしまうという結果になっているようです。
そんな保護者がそれでは一度直接矯正専門医に会って相談してみようということで、このイベントに来られたようです。
残念なことですが、これが歯並びに関する一般市民の正直な感想だと思います。実際にネットで歯並びの情報を閲覧しますと、とんでもない間違った情報が氾濫し、正しい情報は間違った情報よりもむしろ少なくネットの中では少数派の情報になっています。これら情報に関してネットでの規制はほとんど無いに等しく、自分の考えをそれが例え間違っていても、自由に掲載できるところに問題もありますが、一番の問題は、歯科医でさえあれば、矯正歯科は勿論、口腔外科、小児歯科という専門科の看板を臨床能力と関係なく自由に標榜できることを厚労省が認めていることが、一番大きな問題と思います。
これはそのそれぞれの専門の科を習得していなくても看板は出せるということですし、実際にそれぞれの専門科の臨床能力にどうみても問題のある歯科医がこれらの看板を掲げていると言うのは日本全国で相当数に登ります。
そんな歯科医もホームページやブログで歯並びに関する情報を発信している訳ですから、情報が氾濫するだけ氾濫しその中から正しい情報だけを抜き出すのは、歯科の知識のない一般市民では至難の業としか言えないのが今の現実だと思います。
これは何とかしなければいけないのですが.....
- 2010/10/05(火) 14:40:02|
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私の開業している地域では1歳半から3歳半までの幼児の歯科検診と各小・中・高校で歯科検診がなされています。そんな検診の結果、歯並びが悪いと言われたという保護者からの相談が増えています。
特に幼児の歯科検診で言われたというのが多いのには驚かされます。幼児ですので当然乳歯のみが対象となりますので、よほどのケースでない限り
矯正治療の対象とはなりません。その大きな理由は乳歯をいくら奇麗に並べたところで永久歯と生え変わりますので意味がありません。
矯正治療の対象年齢は、早くても永久歯交換が始まる6~8歳からで、本格的な
矯正治療は永久歯が交換した時期です。個人差はありますが、女の子で小学校5.6年生、男の子で中学生がごく一般的です。
少子高齢化の中、一人っ子が多く、保護者はそれだけ子供にいろいろと手を掛ける余裕があることから、今では虫歯のある幼児は非常に珍しい時代です。勿論保護者も歯に関する関心も高く、予防や歯並びに関しても強い興味を持っています。また、今はネットの普及で、検索すればそれらの
情報もすぐ調べることは可能です。
どんな分野でも同じですが、正しい
情報とそうでない
情報が混在し正しい
情報だけを選択するのは、素人には不可能に近いと言えます。
矯正歯科の
情報もまさに混然とし相反する考え方や治療法が
氾濫しているのが残念ながら今の現実です。
そんな
情報が
氾濫する中で、
幼児検診をする歯科医側にも注意が必要であると考えます。検診では勿論虫歯や予防のことを含め口腔内のいろいろな情報を保護者に与えるべきものだと考えますが、不確かな情報や、専門外の情報は安易に与えるべきではないと思います。
歯に関心の高い保護者がこれら不確かな情報を得た場合、彼らはすぐにネットで検索をして、仕入れてきた不確かな情報を調べようとします。そこで矛盾を感じたり不安になったりするようです。そういった保護者が当院へ
矯正相談に来院されるケースが増えつつあります。基本的に6歳前の子供がほとんどで、確かに将来的には
矯正治療を必要とするものの、治療開始にはあまりにも年齢が低すぎるというのが現実です。
また保護者の多くは、早く治療を開始すればするだけ、治療の効果があるのではという間違った情報を持っている場合も多くみかけます。矯正治療の適正な時期は個々により異なりますが、前述の通りです。
- 2008/10/27(月) 14:17:07|
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本日もまるで真夏日です。今年は昨年と違い蝉の声ももうすぐ聞けるのでは、と思うほどの天気です。ところで昨日でしたか、新聞に
パンダの
化石が発見された以下の記事が掲載されていました。
パンダの祖先の頭の骨の
化石が、中国で見つかった。米アイオワ大などと中国の研究チームが今週、米科学アカデミー紀要(電子版)に発表する。200万~240万年前の
化石で、歯の特徴からこの祖先も竹を食べて暮らしていたらしい。
この
パンダの祖先は、現在の
パンダよりやや小型。
化石は、中国南部の広西チワン族自治区内の洞穴で、01年に発見された。歯や下あごの骨はいくつか見つかっていたが、頭の骨の発見は初めてだという。

職業柄か下顎骨の
化石も一緒に写真に掲載して欲しかったのですね。昔の
パンダは今の
パンダより小型だったらしい、そして現在のパンダ同様歯の特徴から竹を食べていたらしいとのこと。
それにしてもこの
化石の
側頭骨の凹みから
頭頂骨の尖りをみると、噛み砕く筋肉の強大さが判ります。やはり見た目はいくら可愛くてパンダは熊なのだということがよく理解できますね。
- 2007/06/20(水) 12:39:05|
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昨日までの快晴から一転、やっと梅雨らしい天気になりました。昨日の
日曜日は久々にデパートそしてショッピングモールへと、何故だか普段は極力避ける
混雑している場所へ行ってしまいました。
御陰で家内共々かなり疲れてしまい、早々に帰宅してしまいました。わずか3時間強あまりの外出でしたが、快晴の
日曜日の買い物は普段と全く異なり、時間を何だか浪費した上に疲れだけが残る感覚に陥りました。
帰宅したのは、午後3時で、何だかグッタリした気分でしたが、心地よい初夏の風が吹き込み疲れを癒す安らぎを与えてくれました。いつ頃からかでしょうか?多分矯正医になってからだと思いますが、人ごみの中は苦手で、妙に疲れてしまいます。
仕事柄、人の顔特に口元には興味があり、人ごみの中にいても色々な人の口元や顔を観察してしまいます。私自身矯正治療で歯並びは勿論口元の調和を重視する治療をしていますので、口元の調和がとれていない人の多さには、いつも矯正医としての自責の念に駆られてしまいます。
また、
日曜日ということもあり、ショッピングモールは、
若い家族連れで溢れています。そんな家族連れの中で乳母車に乗っている幼児におしゃぶりを加えさせている光景をしばしば目撃致します。

口元の調和の重要性を私自身も検診やホームページやブログなどで訴えてきているのですが、このおしゃぶりや指しゃぶりはまさに口元の調和を崩して行く大きな原因となります。
そんな家族に思わず注意したくなるのを、押しとどめるのに苦労する始末です。そんなことを思いながら、色々な人の顔を観察しながらでの買い物は、そりゃ疲れるわなと自身でも判っているのですが・・・・
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- 2007/06/18(月) 10:53:32|
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本日も昨日に続き快晴で、雨の似合う紫陽花がなんとく元気がなさそうに咲いています。それにしてももう6月ですから、そろそろ梅雨入りの声も聞こえてきそうです。
先日の土曜日に仕事を終えて、
湘南地区の
同窓会4支部合同の
学術講演が開催され、出席してきました。午後7時から始まり9時少し前に終わり、場所を移動して懇親会が行われました。出席者も60名弱はいましたか、久しぶりに顔を合わせる同期、先輩、後輩と懐かしい面々と会うことができました。

昨年この企画案が持ち上がり各支部役員で検討され、今回初めて開催された
学術講演会でした。これから年に一度4支部の持ち回りで毎年開催されますが、互いに割りと近隣に住んでいてもなかなか顔を会わす機会もなく、こういった学術情報を通じての親睦もなかなか良いものだと感じました。
懇親会が終え、いつもの藤沢支部の面々と平塚、茅ヶ崎と藤沢に少しづつ戻りながら、なんとハシゴを3軒もしました。私にとっては、こんなに遅く迄までというのは何年振りでしょうか?さすがに私はこれで失礼させて頂いたのですが、残りの懲りない面々は、本拠地に戻りまた数件ハシゴを重ねたようです。
それにしても皆さん元気です!翌日は多少自制した御陰で記憶が飛んだり、二日酔いでといった事態だけは避けれ、体調も普段通りで過ごすことが出来ました。
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- 2007/06/04(月) 15:09:34|
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